離婚が認められる条件

離婚訴訟で、被告側(離婚するよう求められている側)が離婚を拒んでいる場合、裁判所は、どのような条件が満たされれば原告側(離婚するよう求めている側)の離婚請求を認めるのでしょうか。

 

先日、離婚には大きく分けて、①協議離婚、②調停離婚、③和解離婚、④判決離婚の4種類があるというお話をしました。

 

繰り返しになりますが、まず、夫婦間の話し合いで離婚の話がまとまれば、①協議離婚が成立します。

夫婦間の話し合いでは話がまとまらず、どちらかが離婚調停を申し立てた場合で、その調停手続の中で離婚の話し合いがまとまれば、②調停離婚が成立します。

調停手続でも話し合いがまとまらず、さらにどちらかが離婚訴訟を提起した場合で、その訴訟手続の中で離婚の話し合いがまとまれば、③和解離婚が成立します。

 

このように、①協議離婚、②調停離婚、③和解離婚は、離婚が成立する場面は異なりますが、夫婦間の合意で離婚が成立するという点では同じです。

これに対し、離婚調停でも、その後の離婚訴訟でも、離婚の話し合いがまとまらなかったとき、最終的には裁判所が判決により、離婚を認めるか否か、及び、離婚を認める場合の条件(財産分与額をいくらにするか等)を決めることになります。

離婚を認める判決が下された場合、その判決が確定すれば、④判決離婚が成立します。

 

離婚の話し合いがまとまらない場合というのは、具体的には、

A.夫婦のどちらかが離婚すること自体に反対している場合

B.夫婦の双方とも離婚には同意しているが、財産分与の金額や子の親権をどちらが持つか等、離婚の条件について話がまとまっていない場合

のどちらかです。

このうちBの場合であれば、裁判所は離婚することを認めた上で、財産分与の額や親権の帰属等、離婚の条件を決めることになります。

原被告双方とも離婚すること自体は争っていない以上、裁判所が離婚を認めない判決を下すことは基本的には考えられません。

これに対してAの場合、まず裁判所は、離婚を認めるべきか否かを判断しなければなりません。

 

Aの場合において裁判所が離婚を認める判決を下すということは、離婚に反対する被告側の言い分を退けて強制的に夫婦を離婚させることを意味します。

では、そのようにして裁判所が離婚を認める判決を下す場合とは、具体的にどのような場合なのでしょうか。

 

これは端的に、夫婦間の婚姻関係が破綻しているかどうかで決まります。

婚姻関係が破綻している場合とは、夫婦間の信頼関係が完全に損なわれ、かつ、回復の見込みがない状態をいいます。

裁判所は、婚姻関係が破綻していると判断すれば、離婚を認める判決を下し、婚姻関係がまだ破綻には至っていないと判断すれば、離婚を認めない判決を下します。

具体的にどのような場合に婚姻関係が破綻しているといえるのかについてですが、いろいろな要素を総合的に考慮する必要があります。

相手が不貞行為(いわゆる不倫)をした場合は、基本的には婚姻関係が破綻したと認められやすいです。

日常的に暴力や虐待行為がある場合も、婚姻関係が破綻していると認められやすいでしょう。

また、不貞行為や暴力、虐待行為などがなかったとしても、長い間別居していれば、やはり婚姻関係が破綻したと認められます。

具体的には、別居が5年間以上続いていれば、婚姻関係は既に破綻したと評価されやすいと思われます。

 

もっとも、例えば、夫側が離婚を請求している場合、婚姻期間が相当長期間に及んでいたとしても、妻側が長いこと専業主婦しかしていないような場合などは、離婚を認めれば、生活力のない妻を社会に放り出すことになるわけですから、婚姻関係の破綻の有無は比較的厳しめに判断されると思われます。

他方、妻側が離婚を請求している場合で、婚姻期間がそれほど長くなく、かつ、夫側は定職につき生活力にも何ら問題がないようであれば、婚姻関係の破綻の有無は比較的緩やかに判断されると思われます。

 

なお、仮に婚姻関係が破綻していると評価される場合でも、その破綻の原因を作った有責配偶者が離婚を請求している場合は、原則として離婚は認められません。

例えば、夫側の不貞行為が原因で夫婦が別居状態になり、その状態がある程度長期間に及んだ場合、婚姻関係は既に破綻しているといえるでしょう。

しかし、だからといって、夫側が「婚姻関係は既に破綻しているから離婚が認められるべきだ」といって離婚を請求しても、妻側が反対していれば、裁判所は原則離婚を認めません(逆に妻側が離婚を請求すれば、慰謝料付きで離婚が認められるでしょう)。

まあ、当たり前といえば当たり前ですね。

 

離婚の種類

離婚には、大きく分けて、①協議離婚②調停離婚③和解離婚④判決離婚の4種類があります(ほかに審判離婚と認諾離婚というものもありますが、ここでは説明を割愛します)。

 

まず、①協議離婚は、裁判所の手続きを経ることなく、夫婦の話し合いによって行う離婚です。

離婚件数の全体の約9割がこの協議離婚であると言われています。

離婚することに夫婦双方が反対しておらず、かつ、財産分与や慰謝料の額、子供の親権をどちらが持つかなどに関して夫婦間で大きな争いがなければ、わざわざ裁判所の手続きを経ることなく、この協議離婚で済むことが多いと思われます。

夫婦連名の離婚届を役所に提出すれば、それで協議離婚が成立します。

 

これに対し、夫婦の一方が離婚に反対している場合や、夫婦双方とも離婚すること自体には反対していないものの、財産分与や慰謝料、親権などに関して大きな争いがあり、夫婦間の話し合いでは合意に至るのが難しい場合は、裁判所の手続きを取ることが必要になります。

 

裁判所の手続きとしてまず考えられるのが、離婚調停の申立てです。

家庭裁判所で、調停委員会の仲裁のもと、離婚するかどうか、及び、離婚する場合の条件について話し合いを試みます。

離婚を求める側が申し立てるのが通常です。

この離婚調停では、調停委員が夫婦の一方から話を聞き、それをもう一方に伝える形で話し合いを進めていきます。

どちらか一方から話を聞くときは、もう一方は待合室にいるため、夫婦が顔を合わせて言い合いをするような場面は基本的にはありません。

話し合いの結果、調停手続の中で離婚の話がまとまれば、②調停離婚が成立します。

 

調停でも話がまとまらなかったときは、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。

離婚を求める側が原告として提起し、相手側は被告となります。

原則として、離婚訴訟を提起する前に離婚調停を申し立てる必要があり、申し立てた調停が不成立により終了してはじめて離婚訴訟が提起できるようになります(正確に言えば、調停前に訴訟を提起することもできますが、訴訟を提起しても調停送りにされるのが通常です)。

 

離婚訴訟を提起したからといって、直ちに夫婦の話し合いの機会がなくなるわけではありません。

むしろ、裁判所としては、なるべく話し合いで解決させようと仲裁することが多いです。

裁判所の仲裁の結果、訴訟手続の中で離婚の話がまとまれば、③和解離婚が成立します。

話がまとまらなければ、裁判所が、双方の主張立証の内容を踏まえ、離婚が認められるか否か、認められる場合の条件(財産分与や慰謝料の額、親権の帰属先等)について判決を下します。

裁判所が離婚を認める判決を下した場合、相手方が控訴せずにその判決が確定すれば、④判決離婚が成立します。

 

①協議離婚、②調停離婚、③和解離婚の3つは、夫婦間の合意によって離婚が成立するのに対し、④判決離婚は、夫婦間で離婚について合意がない状態(つまり、夫婦の一方が離婚に反対しているか、あるいは、離婚そのものには反対していないが離婚の条件について話がまとまっていない状態)で、裁判所が離婚を認めるかどうか、離婚が認められる場合の諸条件について判決を下します。

ところで、離婚訴訟において裁判所は、どのような場合に離婚を認める判決(認容判決)を下し、どのような場合に離婚を認めない判決(棄却判決)を下すのでしょうか。

これについては別の記事でご説明します。

 

離婚調停までであれば本人でも追行できるかもしれませんが、個人的には、調停離婚も弁護士に依頼することをお勧めします。

離婚訴訟まで行ったときは、本人で追行するのではなく、弁護士に依頼することを強くお勧めします。