違法な抱き合わせ販売

先日、これまでなかなか入手できなかった任天堂switchをやっとのことで手に入れることができました。
子供たちが、クリスマスプレゼントにswitchを強く所望していたため、なんとかしてクリスマスまでには入手しなくてはと思っていましたが、どうにか間に合わせることができました。

今回switchを購入したお店は、とある家電量販店です。
それなりに有名な家電量販店で、家の近くに新しい店舗が開店するというので、特にswitchの在庫があるという事前の情報はありませんでしたが、もしかしたらあるかもと思い、開店時間の午前9時に行ってみました(平日でしたので、午前中お休みして)。

入店してすぐ近くにいた店員さんに「switchありますか」と尋ねると、「ちょっと確認してみます」と言われ、レジまで案内されました。
これはもしや、とドキドキしながら店員さんについていくと、私より先に入店した女性のお客さんがちょうどレジでswitchを買っているところでした。
店員さんがレジの奥の方に入っていき、ほかの店員さんとゴニョゴニョ話した後に再び私の方に来て、「スーパーマリオオデッセイのソフトとセットになったものであればありますが、そちらでよろしいですか。」と聞いてきました。
そういえば、さっきの女性のお客さんが買っていたのも、スーパーマリオオデッセイとのセットのようでした。
私としては、もともとスーパーマリオオデッセイは買うつもりでしたので、「じゃあ、そのセットでお願いします!」と即答しました。

ちなみに、この日のこのお店のswitchの在庫は、スーパーマリオオデッセイセットが2台あっただけだったようです。
私のすぐあとに入店したおばあさんは、私の真横で、別の店員さんに「switchは今ちょうど売り切れてしまいました」と言われ、ものすごい肩を落としていました(気まずい)。

その後店員さんから、「ご購入いただくには当店のモバイル会員になっていただく必要があります」などと言われ、それも「はいはい」と二つ返事で了承します。
そのようなやり取りが続いていたところ、店員さんから、「それから、switchが現在大変品薄の状態ですので、有料の延長保証にご加入いただいた方に優先的にお売りしております」などと言われました。

私「有料って、いくらですか?」
店員さん「5,000円です」
私「は?」
店員さん「品薄ですので」
私「いやいやいや、さすがに高すぎでしょ。入らないとダメなの?」
店員さん「そのように皆様にお願いしております」
私「お願いだったら断るけど」
店員さん「まあ、その・・・」
私「つか、それって独禁法で禁止されてる抱き合わせ販売ですよね(笑)」
店員さん「すみません、ちょっとそこはわかりませんが・・・(笑)。ご加入いただくのは難しいですか?」
私「難しいっつーか、入りません(笑)」
店員さん「では、ご加入はされないということで・・・(笑)」

結果、有料の延長保証には入らずに、無事switchを購入することができました。

さて、独占禁止法では、事業者は「不公正な取引方法」を用いてはならないと定められています(同法19条、2条9項)。
そして、同法に関する公正取引委員会告示では、「不公正な取引方法」の1つとして、「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること」が挙げられています(同告示10項)。
これがいわゆる「抱き合わせ販売」です。

例えば、X店というお店に、超人気でなかなか手に入らないAという商品と、全然人気がなく在庫が余りまくってるBという商品があったとします。
この状況でX店が、Bを売るための方策として、「AとBはセットで売ります。Aだけでは売りません」という売り方をした場合、Aを買いたいお客さんは、本来であれば買う必要のないBも泣く泣く買わされることになります。
このような「抱き合わせ販売」は、公正な競争を阻害するおそれがあるとして、独占禁止法で禁止されるのです。

私がswitchを購入した家電量販店も、switchを購入しようとしている人に対して、同時に有料延長保証というサービスを購入させようとしたわけですから、このような売り方は違法な「抱き合わせ販売」にあたるのです。

さて、そうすると、そもそも
任天堂さんがswitchとスーパーマリオオデッセイのソフトをセットで販売していること自体が「抱き合わせ販売」にあたるのではないでしょうか。

これは基本的には「抱き合わせ販売」にあたりません。
というのも、任天堂さんはswitchの本体を単体でも販売しており、switchの本体を買いたい人は
、本体を単体で購入するか、スーパーマリオオデッセイとセットで購入するかを自由に選べるからです。
スーパーマリオオデッセイのソフトがいらないと思う人は、ソフトとのセットではなく単体で本体を購入することができるので、公正な競争を阻害することにはならないのです。

ただ、今回のように、switchの品薄状態が続く中で、店頭にスーパーマリオオデッセイとのセットしか置いていないような場合、どうしてもswitchを買いたい人は、たとえスーパーマリオオデッセイのソフトがいらなくても、事実上このセットを買わざるを得ません。そう考えると、今後もこのような状態が続くようであれば、switchのセット販売もまったく問題がないとまでは言えなくなるのでは、と思う今日この頃です(セットを買わずに本体単体が入荷されるのを待てばいい、と言われればそれまでかもしれませんが)。

ちなみに、Aという商品とBという商品をセットで売る場合でも、この2つの商品の間に機能上密接な補完関係があると認められる場合には、公正な競争を阻害するおそれはないとして、「抱き合わせ販売」にはあたらないと考えられています。
具体的には、レンタカーと自動車保険のセットがその例の1つとして挙げられています(但し、このレンタカーと自動車保険のセットについては「抱き合わせ販売」にあたるという見解もあるようです)。