失業保険金と退職理由の関係

顧問先である会社の総務部や人事部の担当者から、「今度退職する従業員が、会社都合で離職票を出してほしい、と言ってきているが、どう対応すればよいか」などといった相談を受けることがたまにあります。
離職票とは、正式には「雇用保険被保険者離職票」という名称の書面のことです。
従業員が会社を退職する際、会社は、この離職票に、退職する従業員に対する直近の賃金支払状況やその従業員の退職理由などを記載して、これを従業員に交付しなければなりません。
会社を退職した従業員は、一定の要件を満たせば国から失業保険金の給付を受けることができますが、その申請の際、会社から交付された離職票ハローワークに提出する必要があります。
この離職票について、「自己都合」ではなく「会社都合」で発行してほしいという従業員がたまにいるのです。
 
一般に、「会社都合」の退職とは、会社の倒産にともなって職を失う場合や、会社からリストラされた場合、会社から退職勧奨を受けて辞表を提出した場合などを指します。
これに対し、「自己都合」の退職とは、独立開業や転職の準備などのために会社を辞める場合や、家族の事情で仕事を続けることができなくなった場合など、文字通り従業員の都合で退職する場合などを指します。
 
退職する従業員が、「会社都合」での離職票の発行を求める理由は、その従業員が、「自己都合で退職するよりも会社都合で退職した方が失業保険金受給の面で有利である」と考えているからだと思われます。
この考えは、半分は正解ですが、半分は間違っています。
 
会社を辞めた人は、国から失業保険金の給付を受けることができますが、その受け取り方は大きく分けて2種類あります。
それは、①正当な理由なく自己の都合で退職した場合と、②そうでない理由で退職した場合、の2種類です。
どう違うかというと、①正当な理由なく自己の都合で退職した場合の失業保険と比べて、②そうでない理由で退職した場合の方が、失業保険金の受給開始時期が早く、受給期間も長く、受給額の上限額も大きいのです。
そして、②のそうでない理由で退職した場合の退職とは、会社が倒産した場合や、会社にリストラされた場合など、世間一般で言うところの「会社都合」の退職がその典型です。
そのため、「自己都合で退職するよりも会社都合で退職した方が失業保険金給付の面で有利である」といった考え方が浸透しているのです。
 
しかし、いわゆる自己都合退職がすべて①の「正当な理由なく自己の都合で退職した場合」になるかというと、必ずしもそうとは限りません。
自己都合で退職した場合であっても、退職に正当な理由があるのであれば、①の「正当な理由なく自己の都合で退職した場合」にはあたらず、失業保険金の給付を受ける際に有利な取扱いがなされるのです。
具体的には、体力不足・心身障害等のため退職した場合や、家族の介護のために退職を余儀なくされた場合などです。
この場合は、自己都合か会社都合かのどちらかと言えば自己都合でしょうが、正当な理由がありますので、②の「そうでない理由で退職した場合」(つまり、①の「正当な理由なく自己の都合退職した場合」ではない場合)の条件で失業保険金を受給することができます。
なお、厳密に言えば、②の「そうでない理由で退職した場合」に分類されるものでも、具体的な退職理由によっては、受給期間に差が生じる場合もありますが、ここでは説明を割愛します。
 
そもそも、「会社都合で離職票を出してほしい」と言われたところで、離職票は、「自己都合」と「会社都合」のどちらかにチェックをつけるような単純な体裁にはなっていません。
具体的な退職理由の例がいくつも列挙されている中から、事案に該当する退職理由を選んでチェックしなければなりません。
典型的な会社都合の退職理由としては「倒産手続開始、手形取引停止による離職」とか「解雇」などが挙げられていますが、会社も当然虚偽の事実を書くわけにはいきませんし、会社が虚偽の離職票を発行したところで、ハローワークが事実関係を審査しますので、会社の言い分がそのまま通るわけでもないのです。
 
会社を退職予定の従業員から冒頭のような要求があった場合、離職票の書式を示しながら、会社としては事実と異なる記載はできないこと、そして、自己都合でも正当な理由があれば失業保険金の受給に関して有利な取扱いがなされることを説明することが重要です。
決して、失業保険金の不正受給を手助けするような事実と異なる内容の離職票を出してはいけません。
 

当日に有給を届け出ることの可否

従業員が病気で会社を休んだ際、事前に有給の届出があったわけではないにもかかわらず、会社がこの病欠を有給として取り扱うことが比較的よくあるのではないかと思います。
会社からすれば、別の日に有給を使って休まれるくらいなら、このときの病欠を有給として取り扱って有給を1日分消化してもらった方がよい、という考えがあります。
他方、欠勤した従業員にとっても、(別の日に有給休暇を取得したかったのに、と思うこともなくはないでしょうが)全部消化できるかどうかがわからない有給を確実に1日分使うことができ、しかもそれによって病欠を帳消しにすることができるのであれば、悪い話ではないでしょう。
 
もっとも、このような取扱いは、あくまで会社の同意がなければなりません。
原則は、従業員が有給休暇を取得する際は、事前に会社に届け出なければならないのであって、病欠した後になって、「昨日の病欠を有給にしてください」と事後的に届け出ることは本来は認められません。
なぜなら、会社は、従業員が有給休暇を取得する日や期間について、その時期の変更を求めることができる場合があるからです。
具体的には、従業員がその時期に休暇を取得することが会社の「事業の正常な運営を妨げる」と認められる場合は、会社はその時期には有給を使わないで別の時期に使ってほしい、と主張することができるのです。
従業員が有給休暇を取得する時期を指定する権利を「時季指定権」といい、これに対して会社がその時期を変更する権利を「時季変更権」といいます。
もし従業員が事後的に有給休暇の取得を届け出ることができるとなると、会社が時季変更権を行使する余地がなくなってしまい、会社の権利が不当に害されてしまいます。
会社が時季変更権を行使するかどうかを適切に判断するためには、従業員は少なくとも事前に有給の届出を行わなければならないのです。
 
では、事前でありさえすれば、勤務開始の直前であっても有給の届出はできるのでしょうか。
この問題は、当日の朝に有給の申請をすることは可能か、といった形でよく議論されているところです(ちなみに、有給を「申請」する、という表現は、まるで会社側が有給を認めるか否かを決定できるかように勘違いされる可能性があるので、表現としては不適切だと考えられます。「届出」や「申出」などの表現の方が適切でしょう)。
 
例えば、いわゆる9時5時のオフィスで働いている従業員が、始業時刻直前の午前8時に会社の上司にメールなどで有給休暇の取得を届け出た場合、会社はこの届出を有効なものとして取り扱わなければならないでしょうか。
従業員の有給の届出に対して会社側も時季変更権の行使の要否を判断する時間が必要という観点からすれば、就業規則で始業時刻と終業時刻が定められている場合は、少なくとも休暇取得日の前日の終業時刻前には届け出る必要があると考えるべきでしょう。
ですので、始業時刻が9時と定められている会社において、従業員が当日の午前8時に上司にメールなどで有給の届出をした場合、たとえその上司がメールの内容を確認したとしても、その時点では有効な届出があったとは言えず、事前の届出はなされなかったと評価すべきと考えます(会社側が進んで有給扱いすることは当然禁止されませんが)。
 
これに対して、24時間営業の店舗などに勤務する従業員の場合は、判断が難しいと思われます。
例えば、24時間営業の店舗で勤務する従業員が、午前9時からシフトが入っている日の午前8時に有給を届け出た場合、一応会社の営業時間中に有給休暇取得の届出がなされていますので、事前の申出があったとは言えると考えられます。
しかし、あまりに直前の届出の場合、会社はその有給休暇の取得が「事業の正常な運営を妨げる」かどうかを的確に判断することが困難です。
加えて、「事業の正常な運営を妨げる」場合とは、具体的には、①その労働者の労働が業務の運営に不可欠であり、かつ、②代替要因の確保が困難な場合であると解されているのですが、あまりに直前の届出がなされた場合は、そもそも②の代替要因の確保が困難であることは必至です。
職場の環境や業務の内容などにもよるでしょうが、もともと人員数に余裕をもってシフトが組まれていたとか、業務の性質上1人程度の欠員が出ても問題なく通常通りの営業ができるなどの事情がない限りは、予定されていた定員が欠けたことにより①の要件が認められ、かつ、②の代替要因の確保も困難であるとして、会社は時季変更権を行使して有給休暇取得時期の変更を求めることができるものと考えます。
 
有給休暇を取得する権利が、労働基準法によって認められた、労働者にとって極めて重要な権利であることは言うまでもありません。
労働者がこの権利を行使することを会社が不当に妨害することは当然あってはならないことです。
しかしながら、会社の「時季変更権」もまた労働基準法が認めた、会社にとって極めて重要な権利です。
会社にこのような権利を認めた労働基準法の趣旨を十分に理解した上で、有給休暇の権利が適切に行使されるべきであると考えます。
 

遅刻や欠勤を理由とする解雇の可否

遅刻や欠勤などが多いことを理由に労働者を解雇できるでしょうか。

解雇には普通解雇懲戒解雇の2種類がありますが、遅刻・欠勤の頻度や態様があまりにひどければ、いずれの解雇も可能になることがあります(但し、懲戒解雇をする場合は、就業規則に根拠規定がなければなりません)。

 

労働者は、雇用契約に基づき、使用者の指示に従って労務を提供する義務を負っています。

ですので、所定の就業時間中にもかかわらず、遅刻や欠勤などが原因で労務を提供しないことがあれば、それは雇用契約上の債務不履行にあたります。

遅刻・欠勤をした場合、ノーワーク・ノーペイの原則によりその分の賃金が支払われないのが通常ですが、労務を提供していない以上それは当然のことであって、「賃金が支払われていないから労務を提供していなくても債務不履行にはあたらない」ということはできません。

 

遅刻・欠勤が債務不履行にあたるとはいっても、数回遅刻や欠勤をした程度では、解雇することはできません。

遅刻・欠勤の頻度、期間、理由、態様(届出の有無等)、職務への影響、会社の注意・指導状況、反省の程度、改善の見込み等を総合考慮して、解雇もやむなしと評価できるような理由がなければなりません。

 

遅刻・欠勤を繰り返す労働者がいる場合の会社側の対応としては、都度労働者に対して注意するとともに、書面で業務改善命令出勤命令を出すべきです。

また、通常は就業規則に、正当な理由なく遅刻・欠勤を繰り返すことは戒告等の懲戒事由にあたると定められていると思われますので、適宜、そのときの状況に見合った懲戒処分を課した方がよいでしょう。

それでも遅刻・欠勤が続くようであれば、減給・降格などのように徐々に重たい懲戒処分を課していきます。

そうしていくことで、最終的に懲戒解雇できる条件が整うのです。

また、懲戒解雇ができる状況になれば通常は普通解雇することも可能となります(実際、多くの会社の就業規則では、普通解雇事由の1つとして、「懲戒解雇事由があったとき」などの事由が挙げられています)。

 

ちなみに、懲戒解雇ができる状況でも、必ずしも懲戒解雇を選択する必要はなく、普通解雇をすることも可能です。

懲戒解雇は、退職金を支払わなくてよい場合があることや、再就職が難しくなることなど、労働者にとっては普通解雇よりも酷な結果となりがちです。

そのため、懲戒解雇は普通解雇に比べて要件が厳しく、また、厳格な手続きに従って行わなければなりません。

そこで会社としては、労働者側から懲戒解雇の効力を争われるリスクを避けるために、敢えて懲戒解雇を選択せずに、普通解雇をすることがあるのです。

個人的には、横領等の明確な犯罪行為などが原因であれば懲戒解雇もやむを得ないでしょうが、そこまでに至らない場合は普通解雇にとどめるのが無難ではないかと考えています(これも結局ケースバイケースですが)。

 

解雇が認められる条件

解雇には、①懲戒解雇②普通解雇の2種類があります。

①懲戒解雇は懲戒処分としての解雇であり、②普通解雇は懲戒解雇以外の解雇です(整理解雇も普通解雇に含まれますが、これについては別の記事でご説明致します)。

ドラマなどで上司が部下に「お前はクビだ!」と言って解雇を告げる場面がたまに見られますが、このときの解雇も、懲戒解雇か普通解雇のどちらかに分類されることになります。

もっとも、いずれの解雇であっても、解雇が有効と判断されるための条件は厳しく、ドラマのように簡単に労働者をクビにできるわけではありません。

以下、それぞれの解雇について説明します。

 

まず、①懲戒解雇ですが、これは労働者に対する懲戒処分(ひらたく言えば「制裁」)の一種であり、その中で最も重たい処分です(ちなみに、会社にもよるでしょうが、最も軽い懲戒処分は、単なる注意で終わる「戒告」や、始末書を提出させる「譴責」などです)。

懲戒解雇は、懲戒処分である以上、就業規則に根拠となる規定が存在しなければ行うことはできません。

通常は、「社員が次の各号のいずれかに該当したときは、懲戒解雇とする」などという条項があり、その下に具体的な懲戒解雇事由が列挙されていることが多いと思います。

度重なる無断遅刻や無断欠勤、重大な経歴詐称、故意・重過失による重大な業務阻害、横領等の犯罪行為など、重たい内容のものが列挙されているのが一般的です。

 

就業規則に規定されてさえいれば、どんな理由でも懲戒解雇できるかというと、そうではありません。

例えば、「居眠りを1回でもしたら懲戒解雇とする」という規定があるからといって、実際に居眠りを1回しただけの労働者を懲戒解雇することは無理でしょう(懲戒解雇しても、そのような懲戒解雇は無効と判断されます)。

 

懲戒処分は、当該行為の性質、態様その他の事情に照らして社会通念上相当なものと認められない場合は無効とされます。

特に、懲戒処分の極刑ともいえる懲戒解雇は、当該労働者を会社から排除しなければならないほどの重大な義務違反、規律違反、業務阻害などといった事情が必要と解されています。

 

以上に対し、②普通解雇は、雇用契約の一方当事者である会社による雇用契約解約の意思表示です。

もう一方の当事者である労働者が雇用契約を解約する場合の「辞職」と対をなすものと考えてよいと思います。

懲戒処分の一種である懲戒解雇と異なり、就業規則に規定がなければ普通解雇できないということはありません。

 

しかし、やはり普通解雇であっても、労働者保護の観点から、会社は自由にこれを行ってよいわけではありません(労働者側が原則自由に辞職できるのと異なります)。

普通解雇をするには、客観的合理的理由と社会的相当性が必要とされています。

抽象的でよくわからないかもしれませんが、例えば、能力不足を理由に労働者を普通解雇する場合は、原則として、単に能力が平均的水準に達していないという理由では足りず、著しく能率が劣り、かつ、向上の見込みもないなどといった事情が必要と解されています(一定の能力が期待されて中途採用された幹部候補社員を解雇する場合は、新卒社員の解雇に比べればハードルは相当下がるでしょう)。

 

なお、前述のとおり、普通解雇は就業規則に規定がなくてもできますが、一般的な会社の就業規則には、懲戒解雇事由とは別に、普通解雇事由も規定されていることが多いと思います。

具体的には、「能力が著しく劣り、就業に適さないとき」、「心身の障害、疾病等のため、業務に耐えられないとき」、「勤務成績が不良で、改善の見込みがないとき」などが普通解雇事由として規定されています。

そして、このような普通解雇事由の規定は、あくまで例示的に列挙されているにすぎないと解されています。

ですので、就業規則に普通解雇事由が列挙されている場合でも、それらに該当しなければ普通解雇が許されないというわけではなく、上記の客観的合理的理由と社会相当性さえ認められれば普通解雇は可能と解されています。

逆に、就業規則に規定されている事由に該当するからといって、当然に普通解雇が認められるわけではなく、やはり上記の客観的合理的理由と社会的相当性は必要です。 

 

離婚に伴う慰謝料

夫婦間の婚姻関係が破綻して離婚に至った場合、その責任の所在については、①夫婦のどちらか一方に責任がある場合と、②夫婦のどちらか一方に責任があるとは言えない場合との2つの状況が考えられます(あたりまえですが・・・)。

 

②は、例えば、もともとの性格の不一致や婚姻後の生活のすれ違いなどが原因で、お互いが相手に対して違和感ないし嫌悪感を抱くようになり、別居や家庭内別居を経て、最終的に婚姻関係の破綻に至る場合などです。

要するに、「どっちもどっち」の場合です。

このような場合、離婚にともなう財産分与(婚姻期間中に夫婦の協力によって形成された財産を夫婦で分け合うこと)をどのように行うかの問題は起こりえても、慰謝料の問題は起こりません。

 

これに対し、①は、例えば、夫婦の一方が不貞行為(いわゆる「不倫」)に及んだとか、相手に対して日常的に暴力を振るうなどした結果、婚姻関係の破綻に至った場合などです。

このような場合は、不貞行為等の有責行為をされた側は、有責行為をした側(こちら側を「有責配偶者」といいます)に対して、離婚を余儀なくされたことについての慰謝料を請求することができます。

 

慰謝料の金額は、判決離婚の場合は、有責行為の違法性の程度や有責行為が継続された期間のほか、婚姻期間、年齢、双方の資力、社会的地位等を総合考慮して裁判所が決定します。

金額は、ざっくりしたイメージですが、裁判所が決定する場合、500万円を超えることは稀で、200万円から300万円の間に収まることが多いのではないかと思われます。

協議離婚や調停離婚、和解離婚の場合は、夫婦間の合意で慰謝料の金額が決まりますが、基本的には、裁判所が判断したらだいたいいくらぐらいになる、ということを基準に話し合いで決めることが多いです。

有責配偶者側が、どうしても離婚したいからといって、相場を大きく上回る金額を提示することもあるでしょう(このような場合は、「慰謝料」としてではなく、「解決金」、「和解金」などといった名目で支払われることが多いと思います)。

 

なお、婚姻期間中に夫婦の協力によって形成された財産がある場合は、慰謝料の支払いとは別に、財産分与によりこれを夫婦間で分け合う必要があります。

 

余談ですが、既婚男性の中には、風俗店での性行為は不貞行為にはあたらないと考える人が多いようですが、これは間違いです。

風俗店での性行為も、一般女性との性行為と同様、不貞行為にあたる可能性があります(たとえ「本番行為」でなくても)。

勘違いされている方は注意(?)が必要です。

 

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離婚が認められる条件

離婚訴訟で被告側が離婚することを拒んでいる場合、裁判所は、どのような条件が満たされれば原告側の離婚請求を認めるのでしょうか。

 

先日、離婚には大きく分けて、①協議離婚、②調停離婚、③和解離婚、④判決離婚の4種類があるというお話をしました。

 

おさらいになりますが、まず、夫婦間の話し合いで離婚の話がまとまれば、①協議離婚が成立します。

夫婦間の話し合いでは話がまとまらず、どちらかが離婚調停を申し立てた場合で、その調停手続の中で離婚の話し合いがまとまれば、②調停離婚が成立します。

調停手続でも話し合いがまとまらず、さらにどちらかが離婚訴訟を提起した場合で、その訴訟手続の中で離婚の話し合いがまとまれば、③和解離婚が成立します。

 

このように、①協議離婚、②調停離婚、③和解離婚は、離婚が成立する場面は異なりますが、夫婦間の合意で離婚が成立するという点では同じです。

これに対し、離婚調停でも離婚訴訟でも離婚の話し合いがまとまらなかったとき、最終的には裁判所が判決により、離婚を認めるか否か、及び、離婚を認める場合の条件(財産分与額をいくらにするか等)を決めることになります。

離婚を認める判決が下された場合、その判決が確定すれば、④判決離婚が成立します。

 

離婚の話し合いがまとまらない場合というのは、具体的には、

A.夫婦のどちらかが離婚すること自体に反対している場合

B.夫婦の双方とも離婚には同意しているが、財産分与の金額や親権の帰属等、離婚の条件について話がまとまっていない場合

のどちらかです。

このうちBの場合であれば、裁判所は離婚することを認めた上で、財産分与の額や親権の帰属等、離婚の条件を決めることになります。

これに対してAの場合、まず裁判所は、離婚を認めるべきか否かを判断しなければなりません。

 

Aの場合において裁判所が離婚を認める判決を下すということは、離婚に反対する被告側の言い分を退けて強制的に夫婦を離婚させることにほかなりません。

では、そのようにして裁判所が離婚を認める判決を下す場合とは、具体的にどのような場合なのでしょうか。

 

これは端的に、夫婦間の婚姻関係が破綻しているかどうかで決まります。

婚姻関係が破綻している場合とは、夫婦間の信頼関係が完全に損なわれ、かつ、回復の見込みがない状態をいいます。

裁判所は、婚姻関係が破綻していると判断すれば、離婚を認める判決を下し、婚姻関係がまだ破綻には至っていないと判断すれば、離婚を認めない判決を下します。

具体的にどのような場合に婚姻関係が破綻しているといえるのかについてですが、いろいろな要素を総合的に考慮する必要があります。

相手が不貞行為(いわゆる不倫)をした場合は、基本的には婚姻関係が破綻したと認められやすいです。

日常的に暴力や虐待行為がある場合も、婚姻関係が破綻していると認められやすいでしょう。

また、不貞行為や暴力、虐待行為などがなかったとしても、長い間別居していれば、やはり婚姻関係が破綻したと認められます。

具体的には、別居が5年間以上続いていれば、婚姻関係は既に破綻したと評価されやすいと思われます。

 

もっとも、例えば、夫側が離婚を請求している場合で、婚姻期間が相当長期間に及んでおり、妻側が長いこと専業主婦しかしていないような場合などは、離婚を認めれば、生活力のない妻を社会に放り出すことになるわけですから、婚姻関係の破綻の有無は比較的厳しめに判断されると思われます。

他方、妻側が離婚を請求している場合で、婚姻期間がそれほど長くなく、夫側は定職につき生活力にも何ら問題がないようであれば、婚姻関係の破綻の有無は比較的緩やかに判断されると思われます。

 

なお、仮に婚姻関係が破綻していると評価される場合でも、その破綻の原因を作った有責配偶者が離婚を請求している場合は、原則として離婚は認められません。

例えば、夫側の不貞行為が原因で夫婦が別居状態になり、その状態がある程度長期間に及んだ場合、婚姻関係は既に破綻しているといえるでしょう。

しかし、だからといって、夫側が「婚姻関係は既に破綻しているから離婚が認められるべきだ」といって離婚を請求しても、妻側が反対していれば、裁判所は原則離婚を認めません(逆に妻側が離婚を請求すれば、慰謝料付きで離婚が認められるでしょう)。

まあ、当たり前といえば当たり前ですね。

 

離婚の種類

離婚には、大きく分けて、①協議離婚②調停離婚③和解離婚④判決離婚の4種類があります(ほかに審判離婚と認諾離婚というものもありますが、ここでは説明を割愛します)。

 

まず、①協議離婚は、裁判所の手続きを経ることなく、夫婦の話し合いによって行う離婚です。

離婚件数の全体の約9割がこの協議離婚であると言われています。

離婚することに夫婦双方が反対しておらず、かつ、財産分与や慰謝料の額、子供の親権をどちらが持つかなどに関して夫婦間で大きな争いがなければ、わざわざ裁判所の手続きを経ることなく、この協議離婚で済むことが多いと思われます。

夫婦連名の離婚届を役所に提出すれば、それで協議離婚が成立します。

 

これに対し、夫婦の一方が離婚に反対している場合や、夫婦双方とも離婚すること自体には反対していないものの、財産分与や慰謝料、親権などに関して大きな争いがあり、夫婦間の話し合いでは合意に至るのが難しい場合は、裁判所の手続きを取ることが必要になります。

 

裁判所の手続きとしてまず考えられるのが、離婚調停の申立てです。

家庭裁判所で、調停委員会の仲裁のもと、離婚するかどうか、及び、離婚する場合の条件について話し合いを試みます。

離婚を求める側が申し立てるのが通常です。

この離婚調停では、調停委員が夫婦の一方から話を聞き、それをもう一方に伝える形で話し合いを進めていきます。

どちらか一方から話を聞くときは、もう一方は待合室にいるため、夫婦が顔を合わせて言い合いをするような場面は基本的にはありません。

話し合いの結果、調停手続の中で離婚の話がまとまれば、②調停離婚が成立します。

 

調停でも話がまとまらなかったときは、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。

離婚を求める側が原告として提起し、相手側は被告となります。

原則として、離婚訴訟を提起する前に離婚調停を申し立てる必要があり、申し立てた調停が不成立により終了してはじめて離婚訴訟が提起できるようになります(正確に言えば、調停前に訴訟を提起することもできますが、訴訟を提起しても調停送りにされるのが通常です)。

 

離婚訴訟を提起したからといって、直ちに夫婦の話し合いの機会がなくなるわけではありません。

むしろ、裁判所としては、なるべく話し合いで解決させようと仲裁することが多いです。

裁判所の仲裁の結果、訴訟手続の中で離婚の話がまとまれば、③和解離婚が成立します。

話がまとまらなければ、裁判所が、双方の主張立証の内容を踏まえ、離婚が認められるか否か、認められる場合の条件(財産分与や慰謝料の額、親権の帰属先等)について判決を下します。

裁判所が離婚を認める判決を下した場合、相手方が控訴せずにその判決が確定すれば、④判決離婚が成立します。

 

①協議離婚、②調停離婚、③和解離婚の3つは、夫婦間の合意によって離婚が成立するのに対し、④判決離婚は、夫婦間で離婚について合意がない状態(つまり、夫婦の一方が離婚に反対しているか、あるいは、離婚そのものには反対していないが離婚の条件について話がまとまっていない状態)で、裁判所が離婚を認めるかどうか、離婚が認められる場合の諸条件について判決を下します。

ところで、離婚訴訟において裁判所は、どのような場合に離婚を認める判決(認容判決)を下し、どのような場合に離婚を認めない判決(棄却判決)を下すのでしょうか。

これについては別の記事でご説明します。

 

離婚調停までであれば本人でも追行できるかもしれませんが、個人的には、調停離婚も弁護士に依頼することをお勧めします。

離婚訴訟まで行ったときは、本人で追行するのではなく、弁護士に依頼することを強くお勧めします。

 

 

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