解雇が認められる条件

解雇には、①懲戒解雇②普通解雇の2種類があります。

①懲戒解雇は懲戒処分としての解雇であり、②普通解雇は懲戒解雇以外の解雇です(整理解雇も普通解雇に含まれますが、これについては別の記事でご説明致します)。

ドラマなどで上司が部下に「お前はクビだ!」と言って解雇を告げる場面がたまに見られますが、このときの解雇も、懲戒解雇か普通解雇のどちらかに分類されることになります。

もっとも、いずれの解雇であっても、解雇が有効と判断されるための条件は厳しく、ドラマのように簡単に労働者をクビにできるわけではありません。

以下、それぞれの解雇について説明します。

 

まず、①懲戒解雇ですが、これは労働者に対する懲戒処分(ひらたく言えば「制裁」)の一種であり、その中で最も重たい処分です(ちなみに、会社にもよるでしょうが、最も軽い懲戒処分は、単なる注意で終わる「戒告」や、始末書を提出させる「譴責」などです)。

懲戒解雇は、懲戒処分である以上、就業規則に根拠となる規定が存在しなければ行うことはできません。

通常は、「社員が次の各号のいずれかに該当したときは、懲戒解雇とする」などという条項があり、その下に具体的な懲戒解雇事由が列挙されていることが多いと思います。

度重なる無断遅刻や無断欠勤、重大な経歴詐称、故意・重過失による重大な業務阻害、横領等の犯罪行為など、重たい内容のものが列挙されているのが一般的です。

 

就業規則に規定されてさえいれば、どんな理由でも懲戒解雇できるかというと、そうではありません。

例えば、「居眠りを1回でもしたら懲戒解雇とする」という規定があるからといって、実際に居眠りを1回しただけの労働者を懲戒解雇することは無理でしょう(懲戒解雇しても、そのような懲戒解雇は無効と判断されます)。

 

懲戒処分は、当該行為の性質、態様その他の事情に照らして社会通念上相当なものと認められない場合は無効とされます。

特に、懲戒処分の極刑ともいえる懲戒解雇は、当該労働者を会社から排除しなければならないほどの重大な義務違反、規律違反、業務阻害などといった事情が必要と解されています。

 

以上に対し、②普通解雇は、雇用契約の一方当事者である会社による雇用契約解約の意思表示です。

もう一方の当事者である労働者が雇用契約を解約する場合の「辞職」と対をなすものと考えてよいと思います。

懲戒処分の一種である懲戒解雇と異なり、就業規則に規定がなければ普通解雇できないということはありません。

 

しかし、やはり普通解雇であっても、労働者保護の観点から、会社は自由にこれを行ってよいわけではありません(労働者側が原則自由に辞職できるのと異なります)。

普通解雇をするには、客観的合理的理由と社会的相当性が必要とされています。

抽象的でよくわからないかもしれませんが、例えば、能力不足を理由に労働者を普通解雇する場合は、原則として、単に能力が平均的水準に達していないという理由では足りず、著しく能率が劣り、かつ、向上の見込みもないなどといった事情が必要と解されています(一定の能力が期待されて中途採用された幹部候補社員を解雇する場合は、新卒社員の解雇に比べればハードルは相当下がるでしょう)。

 

なお、前述のとおり、普通解雇は就業規則に規定がなくてもできますが、一般的な会社の就業規則には、懲戒解雇事由とは別に、普通解雇事由も規定されていることが多いと思います。

具体的には、「能力が著しく劣り、就業に適さないとき」、「心身の障害、疾病等のため、業務に耐えられないとき」、「勤務成績が不良で、改善の見込みがないとき」などが普通解雇事由として規定されています。

そして、このような普通解雇事由の規定は、あくまで例示的に列挙されているにすぎないと解されています。

ですので、就業規則に普通解雇事由が列挙されている場合でも、それらに該当しなければ普通解雇が許されないというわけではなく、上記の客観的合理的理由と社会相当性さえ認められれば普通解雇は可能と解されています。

逆に、就業規則に規定されている事由に該当するからといって、当然に普通解雇が認められるわけではなく、やはり上記の客観的合理的理由と社会的相当性は必要です。